自転車に乗って出かけるようになると、街中で生活しているだけでは目にすることの少ないたくさんの生き物を見つけることが出来ます。そのため、私は自転車に乗り始めてから、サイクリングロード等にいる身近な野鳥の名前を覚えるようになりました。生き物に出会うことも、サイクリングの楽しみの一つだと感じています。

しかしその一方で、私はたくさんの動物たちの死も目にするようになりました。道路脇には、鳥や虫だけでなく、ネコ、イタチ、タヌキ等様々な生き物のなきがらがありました。動物たちが命を失って、腐食していく様を目の当たりにしました。私はそれまで、飼っていたペットを埋葬した経験以外に、死に出会うことなど、全くありませんでした。ほぼ無菌の世界に暮らしていたのではないか?と思うほどです。文学では「雨は浄化のメタファーだ」といいますが、その意味を、今になって初めて実感を伴って理解できた気がします。雨は、死骸も含め、道路の塵埃をすべてきれいに洗い流してくれるのですね。

自転車に乗り始めてすぐの頃、サイクリングロードで血を流して死んでいるムクドリを発見しました。道の真ん中に横たわっていたので、ともかく端によけたほうがいいかなでも触るのも怖いなどうしようと思っておろおろしていると、犬の散歩で近くを通りがかった方が「埋めてやりたいんか?」と言って声をかけてきてくださいました。そして、二人で近くの木の根元に穴を掘り、ムクドリを埋葬して墓をつくりました。今でもそのムクドリの墓に手を合わせに行くと、きれいな野花が供えられています。きっと一緒に埋めてくださった方が、ずっと気にかけてくださっているのだろうと思います。

現在のムクドリのお墓

↑現在のムクドリのお墓(右)

私にとって、初めて動物の死を目にしたときに、一緒にお墓をつくってくださった方がいたことはとても幸運だったと思い返します。そのおかげで、今は、埋葬できるような状況にあれば、独力で動物を埋葬することが出来るようになりました。傍で見ているときは、「あ、死んでるんだな」と冷静に受け止められても、抱き上げた瞬間、感情が抑えられなくなります。やはり未だ、動物の死は、私にとって衝撃を伴います。

自転車に乗るようになって、今まで知らなかった世界を、少しずつ知ることが出来るようになりました。自転車に乗らなければ、野生動物の埋葬なんか、きっと一生経験せずに過ごしただろうな、と思います。私はこれまで、本当に小さな世界でしか生きてこられませんでした。だから、動物たちの死と向き合うことで、大きな世界に触れられるようになったことは、自分にとって大事な経験であると感じています。

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