2020年8月15日の釜歩きツアーに参加してきました。
今回は,前回(2020夏釜歩きツアーその1)
の続きを紹介していきます。
■ドヤ街の変化■
釜ヶ崎でも高齢化が進んでおり,ドヤにも空き部屋が増えてきているそうです。
そのため,宿泊所やアパートの持ち主は,空き部屋を埋めることに必死になっているようです。
こちらは,3階建てだけど6階建てに見えるドヤです。二段ベッドの上下にそれぞれ窓がつけられたため,このような造りになっているそうです。
ドヤを改修して,バックパッカー向けの宿にしたり,若者が集えるアパートにしているところもあるそうです。
バックパッカー向けの宿には,定住している人もいて,日本人だけでなく,働きながら暮らしている外国人も多くいらっしゃるのだそうです。
さらに,最近はベトナム人の定住者が増加しているそうです。
ベトナムの食材屋さんや,ベトナム料理のお店がありました。
食材屋さんは日本人相手ではなく,ほとんどベトナム人を相手に商売をされているそうです。
また,この食材マーケットの上はマンションになっているのですが,以前は韓国のホステスさんが多くお住まいであったらしいのですが,今はベトナムの方が多く住まわれているのだそうです。
こちらは,ベトナム料理屋さんです。生春巻きや焼きそばだけでなく,イナゴやコオロギの炒めの様なメニューもあり,本格的な感じがしました。
さらに,インバウンド需要を見込んで,JR・南海新今宮駅の周辺は,ホテルが林立していました。
このFPホテルは,インバウンド専門のホテルとして建てられましたが,新型コロナウイルスの影響により,7月23日から閉鎖されています。
少し前までは多くの外国人観光客の姿が見られたようですが,今は宿泊者も少ないようでした。
■新今宮駅の北側■
新今宮駅の北側を入っていくと,通天閣が見えてきます。
この光景は,今話題の「半沢直樹」というドラマのワンシーンにもあったそうです。
このあたりは,映画やドラマのロケにもよく利用されるということでした。
また,日払いアパートが多く,大隅グループの看板が至る所に見えました。昔は的屋さんもたくさん住んでいたそうです。
そのなかでもとりわけ目を引くのは,星野リゾートのホテル建設予定地の広大な敷地です。
2021年11月末に,14階建てのホテルが建つようです。
地域に配慮してか,(建前として?)贅沢過ぎるような部屋は作らないと言っているそうですが,本当のところはわからない,と阿修羅さんはお話しされていました。
つぎに,こちらはYOLOBASEという建物です。
外国人のためのホテル・レストランなど接客業の訓練施設となっているそうです。ホテルスタッフ養成のため,外国人を雇ってスタッフにしているとのことでした。
■飛田本通商店街■
それから,また国道を渡って南側へ戻り,今度は動物園前の商店街の方へ向かいました。
商店街には外観が派手なことでも有名なスーパー玉出があります。
ここの店舗のお漬け物屋さんで,赤井英和さんのお父さんが働いていらっしゃったそうです。
東側の路地に入っていくと,「オーエス劇場」という大衆演劇場がありました。
狭い路地の両側には古い木造家屋が並び,趣のある通りとなっていました。
オーエス劇場は,明治時代から残る建物で,現在も営業を続けられているそうです。
つぎに,この商店街を歩いていると,すぐに目に入ってくるのが,至るところにあるカラオケ居酒屋です。
ほとんどが中国の女性が営業しているお店だそうです。これだけお店が増えるというのは,やはり何か惹きつけるものがあって,人気があるのだと思います。昼間でもお客さんの姿がありました。
商店街では,COCOROOMというすてきなお店で休憩させてもらいました。
COCOROOMには,ゲストハウスとカフェが併設されており,釜ヶ崎内外の人たちの出会いの場,表現の場として,様々なアートイベントも開催されているそうです。庭にはみんなで堀ったという井戸もありました。
商店街の最後に,飛田新地の門跡を見にゆきました。現在は提灯が吊下げられています。
女性達が逃げられないように飛田を囲んでいた塀の名残を,商店街からも見ることが出来ました。
その後はまた西の南海沿線の方に向かって戻りながら歩きました。
今回歩いたルートがこちらになります。
■釜ヶ崎のこれから■
最後に「ふるさとの家」というところに集まり,阿修羅さんを囲んで今日の振り返りをしました。
そこで興味深く思った話題が,釜ヶ崎という街のこれからについてです。
釜ヶ崎の他にも東京の山谷,横浜の寿町が日本の三大寄せ場と言われてきましたが,最近では釜ヶ崎以外の二か所ではもう日雇い労働者の姿がほとんど見えなくなってしまっているそうです。
例えば山谷では,労働者のいなくなったドヤが売り払われてそこにファミリー向けのマンションがどんどん建てられました。それによって,「山谷で炊き出しなんかするな」という意見が多くなり,山谷で炊き出しをすることが難しくなったそうです。山谷でごはんをつくっても,それを淺草や渋谷まで出て配らねばならなくなり,そういったほかの地域に出向いてもまた圧力がかけられ,最近では比較的圧力が少ない池袋で炊き出しを配るようになっているとのことでした。でも,池袋にはドヤがないので,そこでは野宿をする人が多くなっているそうです。
また,渥美組のような大手の建設会社は,マンションを買い上げてそこを会社の寮にするのですが,マンションの場所がバラバラに散らばしてあるため,労働者が見えにくくなっているのだそうです。
加えて,近年のスマートフォンの普及により,「ギグワーク」と呼ばれるインターネットを介して直接企業から単発の仕事を請け負う形態が増加し,労働者同士のつながりが希薄になっています。日雇い労働の場合でも,腕のいい人は直接業者からスマートフォンを貸し出されて,スマホで仕事の連絡が来るそうです。そうなると,寄せ場に行く必要もなくなります。
こういった様々な要因から,労働者の姿がどんどん見えなくされていってしまっているなかで,唯一労働者の姿が見える街が,未だドヤの残る釜ヶ崎なのです。
阿修羅さんは,釜ヶ崎は日本中を移動している人たちが唯一休憩が出来る場所で,流動の中継点になっていると言います。
釜ヶ崎にも,橋下元市長の「西成特区構想」や星野リゾートの進出にみられるようにジェントリフィケーションの波が押し寄せてきています。ジェントリフィケーションとは,もともと労働者の貧しい街であるような地価の安い地域が不動産業者等に目をつけられて開発が行われ「きれいに」されることで,家賃が上昇したり街の雰囲気が変わってしまい,もともと住んでいた貧しい人たちが追い出されてしまう現象です。
ジェントリフィケーションを防ぎ,釜ヶ崎のよさを残していくために必要なことは何かを,最後に阿修羅さんがお話してくれました。
阿修羅さんによると,裸でうろうろしたり,いきなり怒ったりするような,問題を抱えたさまざまな人たちが集中して暮らしていること,が一番有効なのだそうです。
釜ヶ崎にはファミリーマートやローソンはありますが,セブンイレブンはありません。ファミリーマートやローソンは,地元の人がやっており,労働者の扱いにも慣れているそうです。けれど,セブンイレブンだけは地元の人が誰もやらなかったので,副社長が出店のため視察に訪れたのですが,その結果「ここはやめよう」ということになったのだそうです。
そんなふうに,企業や資本家が「危険だ」とみなすような人たちが住んでいないと,ジェントリファイされてしまうし,そういう人たちが集まることで,支援者も集まるので,福祉のネットワークの網の目を細かく張り巡らせていくこともできるから,そういう点からも大事なことなのです,とお話しされていました。
今回の釜歩きでは,今まさにどんどん塗り替わっていく途中の釜ヶ崎を目の当たりにしました。
これから星野リゾートのホテルが建ったり,あいりん総合センターが取り壊されると,本当に今までとは違った景観に変わってしまうと思います。そのような中でも,最後の阿修羅さんの力づよい言葉には,非常に感銘を受けました。参加出来て良かったと感じました。