■釜歩きツアーに参加する■


釜ヶ崎では毎年お盆の時期に,夏まつりが行われています。

それに合わせて,ご自身も日雇い労働者で在野の研究者でもある水野阿修羅さんが,釜ヶ崎を案内してくださるツアーが開催されています。釜ヶ崎日雇労働組合が主催で,参加費用は500円です。

今年は新型コロナウイルスの影響により夏祭りは中止となりましたが,ツアーは開催されるということでしたので,参加してきました。

 

■釜ヶ崎って?■


ツアーの内容を紹介する前に,まずは釜ヶ崎という街について少し説明します。

釜ヶ崎は,大阪西成区にある日雇い労働者の集う街である「寄せ場」で,JR・南海新今宮駅の南側に広がる地域を指します。

高度経済成長期の建設ラッシュ,とりわけ1970年の大阪万博開始を前に,たくさんの労働者が釜ヶ崎に集められ,(「やど」をひっくりかえして)「ドヤ」と呼ばれる簡易宿泊所が立ち並びました。

 

釜ヶ崎の位置

地図には「釜ヶ崎」という名称はなく,メディアではもっぱら「西成」や「あいりん」と呼ばれます。

ひとつめの「西成」は行政区の名前です。

ふたつめの「あいりん」は,1961年に起こった第一次暴動がメディアにより喧伝されたことで,釜ヶ崎についてしまった悪いイメージをかき消すために,新たに付けられた名前です。

さまざまな名前で呼ばれる街ですが,寄せ場としての歴史や役割を重んじる人々には「釜ヶ崎」という名前が好まれています。

 

■2020年夏の釜歩き■


この日はめちゃくちゃ暑かったので,帽子と首に巻く冷たいタオルを身に付けて行きました。

また,水分補給のために,凍らせた500mlのペットボトルを3本も持参し,熱中症対策万全で臨みました。

 

開始時刻よりも早く着いてしまったので,釜ヶ崎日雇労働組合の冷房の効いた事務所の中で待たせてもらいました。

事務所には,歳をとったわんこがいて,庭で日向ぼっこをしていました。

 

釜日労のわんこ

「こんにちは」と声をかけると,吠えられてしまいました。

吠えさせちゃってごめんね…と思いつつ,年をとっても立派な番犬だな…と感心しました。

 

ツアーは釜ヶ崎日雇労働組合の事務所前からスタートです。

 

釜日労事務所前

黄色いベストの方が,阿修羅さんです。紫色の髪とおひげがトレードマークです。

 

■あいりん総合センターの建て替え■


現在釜ヶ崎では,労働市場や市営住宅,病院など様々な施設が合わさった「あいりん総合センター」の建て替え工事が進められています。あいりん総合センターは新今宮駅を出てすぐ目の前にそびえたつ巨大な建物で,まさに釜ヶ崎を象徴するような施設でした。

現在は閉鎖中で,早ければ今年の秋ごろから着工し,2025年に完成予定だそうです。

 

センターは様々な機能を併せ持つ複合的な施設で,1階と3階は労働者が業者とその日の仕事の交渉を行う「寄せ場」で上層階は病院や市営住宅となっていました。シャワールームや理髪店などもあり,雨風や暑さ,寒さをしのげる皆の居場所でもありました。

 

裏側から見たあいりん総合センター

そういったセンターの機能は分散され,新たな市営住宅や医療センター,職業安定所などが周辺に建設されており,街の景観が塗り替えられていく様子を目の当たりにしました。

 

建設中の萩之茶屋第二住宅

計画では,センターの敷地を南北に分断し,南半分には4階から6階建ての労働施設が建設される予定となっているそうですが,北半分は大阪市の取り分となっており,そこがどうなるのかは,まだ明らかになっていないそうです。

2011年には近隣のJR天王寺駅にあべのキューズモールがオープンしましたが,それによって周辺の小さなお店が大打撃を受けたため,地元商店街は巨大モールが来るようなことにはなってほしくない,と考えておられるようです。

萩之茶屋北公園

傍にある公園にはテントが設置され,その下には囲碁を楽しむ人がおられました。

釜ヶ崎にある公園は三角公園を除いて,フェンスが張り巡らされ,夜間は立ち入れないようになっています。

すぐ近くには,新しい医療センターがありました。

新しい医療センター

新しい医療センターの周りには全く塀が設けられていないことについて,昔はトラブルが起きた際,石を投げられることがあり塀も必要であったが,今はそんな元気がある人もいないようだ,と話されている方がいました。

萩之茶屋第一住宅

新しい市営住宅は間取りが2Kから2DKになっているそうです。とても広い駐車場もありました。

 

職業安定所や福祉センターは,南海高野線の高架下に移設されていました。

 

職業安定所

職業安定所の向かいには,待合室が設置されていました。

職業安定所に隣接する待合室

待合室は,朝5時から夕方5時まで365日開所されていて,冷暖房も効いているので,みんなの休憩所になっているそうです。365日,土日も含めて開いている休憩所ができたのは,釜ヶ崎での運動の成果だと阿修羅さんは仰っていました。

職業安定所を北上した所に,西成労働福祉センターがありました。

西成労働福祉センター

ここが新たな寄せ場となっており,建物の横に縦長に広がっている駐車場に労働者を雇いにきた業者が車を止めて,交渉が行われているそうです。

 

■ここは,何?■


さて,こちらの駐車場に屋根が取り付けられたスペースはいったい何でしょうか?

不思議な駐車場?

中に入ると,テーブルやキャスターが片付けられて,置かれていました。

片隅にテーブルやボードが置かれています

ここは,もともと路上で露天商をしていた方が,不法占拠だと追い立てられ,駐車場のスペースを借りて営業されるようになって出来た商店街だそうです。1スペースは2万円ほどで借りるのだそうです。

この日はお盆の爲お休みだったのだと思います。

 

ちなみに,露天商がつくった商店街は,新今宮から少し北の方にある日本橋の「五階百貨店」がさきがけだそうです。

 

 

五階百貨店は,眺望閣という五階建ての建物の前にできたことが,名前の由来とのことでした。

明治時代までは,このあたりの日本橋筋に貧しい人たちの住む「木賃宿」が立ち並んでおり,日本橋筋は「昔の釜ヶ崎」だったそうです。

 

つづいては,こちらの倉庫です。ふつうなら,通り過ぎてしまいそうな倉庫ですが…

貸倉庫

この倉庫は,以前は多くのアルミ缶売りが集まる場所だったそうですが,それが中国産の靴置き場になり,今ではそれもなくなって貸倉庫になっているそうです。

アルミ缶を売りたい人は,今は南海沿線の向こう側の「金城商店」というところへ売りにゆかれるそうです。

相場は,今年の春に1kg55円だったところが,今では80円になり,値段が良くなっているそうです。

よいときは,1kg100円ほどの値がつく事もあったということでした。

こんなふうに,何気ない場所からもおもしろいお話がきけるので,とても楽しいです。

 

記事が長くなってしまったので,つづきは次のページで紹介したいと思います。

2020夏 釜歩きツアー その2

 

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