自転車のこと

去年の夏、今まで乗ってきた自転車が古くなってしまったため、新しい自転車を買いました。ママチャリではなく、スポーツタイプのものにしました。26インチのクロスバイクで、7段変速がついています。新しい自転車にしてから、今までよりも楽に速く走ることができるようになり、自転車に乗ることが楽しくなりました。家の近くにはサイクリングロードがあるので、毎日のように、走りに行くようになりました。最初は慣れないため、転ぶことも多かったですが、少しずつ、距離を伸ばして、長い距離を走れるようになりました。そうするうちに、いつか、自転車で長い距離を走りたい、旅に出たい、と思うようになりました。

今年の夏は、どうしても気分が沈みがちでした。鬱屈して、塞ぎ込んで悶々としてしまう日々が続きました。そのような中で、家の中にいると、閉塞感で息苦しく、気が狂いそうになってしまうため、これなら外に出ている方がましだと思い、暑い中を自転車で走り回っていました。自転車に乗ると、走っていれば景色がくるくる変わるし、走るためには、車や歩行者、道路の状態等、様々なものに気を留める必要があり、気が紛れるからです。しかし、どうしても、私はこんな自分がとても嫌でした。なんでこうもダメになってしまうのだろう…と考えると気が滅入り、やりきれない思いでした。何とかしたい、こんな自分を変えたい、と強く思いました。そして、今は自転車にしか乗れないけれど、自転車には乗れるんだから、自転車で旅に出てみよう、と思いました。そこで、まずは、ずっとやってみたい、と思ってきた琵琶湖一周をしよう、と心に決めました。

準備

湖を見ながら走りたかったので、反時計回りで周ることに決めました。そして、全行程における約半分の距離で、かつ安価なビジネスホテルのある長浜に宿をとり、2日間かけて一周する計画を立てました。8月は盛夏で気温も高いですが、 朝早く出発すれば大丈夫だろう、と安易に考えました。自転車にはドリンクホルダーを2つ取り付け、地図は滋賀県が発行している『びわ湖周遊サイクリングマップ』を入手しました。荷物は、できるだけ少なくするため、1日目に来ていた服を洗濯して2日目にも着るようにし、着替えには宿で着用するTシャツと短パンだけを用意しました。その他、長距離を走って、お尻が痛くなるのを軽減させるために、しっかりしたパッドのついたパンツと、滑り止めとパッド付の指なしグローブをamazonで購入しました。いずれも1000円前後のとても安価なものですが、十分役に立ちました。

小関越えの旧道の入り口にある看板

次に、京都から大津へ、どのようにいけばいいかを考えました。調べると、山科から国道1号線を使うのが一般的なようでしたが、国道1号線は交通量が多く、まだ走ることに不安があったため、東海道の逢坂越えの大関に対し、京都と北国町をつなぐ間道として使用されてきたという、小関峠を越えるルートを走ることにしました。本番の日までに、自宅から浜大津まで、2回試走を行いました。峠越えは大変でしたが、初めて山を下って琵琶湖が目に入った時は、とても感動しました。

1日目(8月10日)

4時30分ごろに家を出発しました。気持ちが高揚して、前日はなかなか寝付けず、ほとんど睡眠がとれませんでした。走り始めると、とても蒸し暑く、まだ日が昇っていないのに汗をたくさんかきました。浜大津には6時ごろに到着しました。浜大津まではこれまでに2回試しに走っていたので、何事もなく、無事に到着することができました。

最南端で起終点となっている瀬田の唐橋

湖東は、自転車道路が整備されていて、迷うことなく安全に走行できました。草津の琵琶湖博物館のあたりで、朝ご飯に持参したおにぎりを食べました。蓮が美しいとされている場所ですが、昨年から開花していないようで、蓮の花は見られませんでした。その後、守山市、野洲市、と順調に走りました。お尻が痛くなり始めましたが、湖のほとりでいつでも休憩することができたので、自分のペースで進んでいけました。

近江八幡では、一旦湖を離れ、一面が田んぼの中の道を走りました。

暑さのため、途中のコンビニで休憩してガリガリ君の梨味を食べ、一息つきました。やっとのことで彦根に到着するも、疲弊していたため、観光もすることなく、先へ進みました。

1日目の目的地である長浜が近づき、すこしほっとして、松原で休憩しました。芝が広がっている美しい湖岸でした。

15 時過ぎに長浜に到着しました。思っていたよりも早く着くことができました。宿のチェックインの時刻が16時だったので、それまでに少し時間があったため、近くのスーパーでご飯を買って、長浜港の近くで湖を見ながら食べました。無事到着できたことは嬉しかったはずですが、頭はぼんやりしていました。明日も長距離を走らなければならないため、気を抜けないな、と思ってしました。そして、16時になると宿へ向かい、早々とチェックインを済ませました。自転車は屋根付きの駐車場の一角に止めることができました。部屋でシャワーを浴びて、来ていた服を洗って干すと、疲れてしまったのか、18時にはもうベッドに入って眠ってしまいました。

2日目(8月11日)

2日目は4時半ごろ起床して準備をしたのですが、こんな朝早くにチェックアウトしてもいいのかな?とぐずぐずしていて、結局5時半にチェックアウトし、出発しました。長浜からは、京阪神と北陸を結ぶ北国街道を少し走りました。古い街並みが整備されて残されており、また別の機会にゆっくり見て回ってみたいな、と思いました。

湖北へ行く途中では、一面に広い蓮畑が広がっており、非常に美しく感動しました。内陸側にも、湖側にも蓮が咲き渡っていました。こんなにたくさんの開花した蓮を見るのは初めてでした。早朝であったので、涼しく走りやすかったです。

「大音」の交差点を東へ進み、木ノ本というまちに立ち寄りました。坂を上って木ノ本地蔵院で、朝ごはんにコンビニで買ったおにぎりを食べました。眼の仏様が祭られているお寺で、境内にはたくさんの身代わりカエルがいました。カエルたちは、人々の幸せや健康を願って、自ら身代わりの願をかけ、片目をつむって暮らしているそうです。

 

境内には、カエルだけでなく、かわいらしいネコもいました。お寺で飼われているネコのようで、一生懸命背中をこすりつけて、身体をなめて毛づくろいをしていました。我が物顔に悠々と歩き回り、そのあとには、毛がふわふわと待っていました。きっと皆に愛されているのだろう、と思いました。

木ノ本駅のすぐ近くにあるお菓子屋さんで、祖母へのお土産に1本200円のでっちようかんを買いました。おじいさんの営む昔ながらのお店でした。 

ゆっくり休憩してからまた走り出しました。途中で弱い雨が降り出し、合羽を着ようか迷いましたが、すぐに止んだためほっとしました。湖北は走りながら見える景色が非常に美しく、まさに「静かな湖畔」そのものの風景だと感じました。早朝であったこともあり、走っていて、とても気持ちよかったです。

湖北を過ぎて海津という街につきました。海津地区一帯は、江戸時代に北国街道の宿場・港町として栄えた街で、風波から家宅を守るために作られた石積みが随所に残されています。趣のある街並みが残されており、散策をするのも楽しかったです。

日が昇ると、気温も上がり、日差しが厳しく、走り続けることもしんどくなり始めました。今津を過ぎ、黙々とただ足を回すことに集中しました。有名な白髭神社にも立ち寄りたかったのですが、神社の境内だけでなく、湖上の鳥居周辺も、水上ボートで乗りつけた人々で混雑していたため、観光は諦めて先へ進むことにしました。昼近くになり、道路からの熱気で身体が熱くなっていました。なんども休憩をはさみ、水分補給を心掛けました。

安曇川の近くで、ヤギに出会いました。草を食べることに専念しており、食べながらぽろぽろとフンをしていました。その無心に生きている姿に、なんだか励まされる思いがしました。

以降は自転車道路がどこにあるのかわからなくなってしまい、暑さのため、探そうという気もそがれてしまったので、ほぼずっと国道161号線を走り続けました。暑さと疲れで何も考えられず、ただ浜大津を目指して走りました。どうしても、日が暮れる前に小関峠を越えて山科につきたかったため、焦る気持ちもありました。へとへとになりながらもペダルを回し、16時ちょっと前に、漸く浜大津に帰り着くことができました。今回の自転車旅行の中で、一番嬉しかった瞬間でした。港では、ちょうど花噴水が上がっているところも見ることができました。

旅の記録

  8月10日 8月11日
走行時間 6:46,33 8:04,22
走行距離 110.22 km 137.36 km
平均速度 16.2 km/h 17 km/h
最大速度 33.7 km/h 31.3 km/h

追記:びわ一の認定証

琵琶湖一周では、設置されているチェックポイントのクイズに答えていくと、「びわ湖一周サイクリング認定証」を発行してもらうことが出来ます。全部で13か所くらいあるチェックポイントの中で、4か所以上でチェックを行うことが必要で、あとは手数料が1000円かかります。せっかくなので、私は認定証をもらおうと思い、チェックポイントを事前にびわ湖一周のホームページ(https://www.biwako1.jp/authorize)で調べてから周りました。私はスマートフォンを持っていなかったので、紙にチェックポイントのクイズの答えと到達した時刻を記録して、家に帰ってからFAXで申請しました。認定証が届くと、頑張って一周したんだなぁ…という実感もわき、うれしかったです。部屋の壁に飾っています。

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